【毎日が、非常時 No. 006】
4月5日付け「The New York Times」紙の科学欄が「放射能の測定値がいくつになると危険なのか?」という記事を掲載していました。
その記事の書き出しは、福島第一原子力発電所が津波の被害を受けたことを述べた上で、日本、もしくは世界中の人々が果たして「どれだけの放射能を浴びたら癌になるのだろうか?」という疑問を呈しているのです。
ただし、その正解はどうも無いようです。バンダービルト大学のジョン・ボイス博士は人間に対する放射能の影響について研究してきた方ですが「ごくわずかな放射能を危険視するのはどんなものか?」というのです。第一「10レムもの放射線を浴びた結果がどうか、なんていう実験結果などあるわけがない」と先生は言われているのですね。先生はメリーランド州ルイビルの国際伝染病研究所の科学部長でもあり、ここで実際に政府の予算で放射能の被害を研究していらっしゃるわけです。
先生は放射線含有量の少ない食事を何百万人の人が食べた結果を、その含有量×何百万人で算出することの危険を言われているのです。
日本はご存知のように世界で唯一の被爆国ですから、広島にも長崎にも被爆後に癌で亡くなられた方が何十万人もいらっしゃるのです。なかでも一番多いのは白血病(Leukemia)になられたケースでしょう。ただ、この方々が実際に白血病で命を亡くされたのは発病後5年ぐらいしてからです。つまり、1950年ごろをピークに亡くなられたのではないでしょうか。
こうしたケースは直接、放射線に体をさらして血液やリンパ液が癌化してしまうわけですから、福島第一原発のケースとはかなり様相が違うでしょう。
「The New York Times」紙は「レム(REM、Roentgen Equivalent in Man)」といういささか古い放射能の単位を使っていますが、福島原発から12マイル(約20km)の距離で受ける分量は1時間あたり0.1レムということになっています。日本の専門家は「たとえ0.1レムの放射能であっても、4日間これに当たり続けると癌になり得る」と証言したことになっていますが……。
ちなみに、よく目にするシーベルトの単位ですが、これは100レムが1シーベルトで、巨大な単位です。したがって通常は1,000分の1のミリシーベルト(mSv)で表示されることになっており、国際放射線防護委員会(ICRP)が避難勧告を定めている年間の放射線被曝上限値は100mSvです。
エヴァンス・B・ダップル博士は広島、長崎の被爆者20万人のその後の状況を調査し、このほど著書として出版された方です。そのダップル先生も「今回の原発事故で雨水に濡れた野菜を食べたり、それを餌にした牛のミルクを飲んだりするケースと、広島、長崎の被爆を一緒にするのは難しい」と考えておられるのです。
広島や長崎の被爆者の40%は、現在もなお元気で生きていらっしゃるのです。ですから、原発事故のために雨水が汚染されて、それが安全かどうか、といったことは「全く別の次元の問題だ」とダップル博士は指摘しています。
「The New York Times」紙は項を改めてデニーズ・グレイディー記者の「放射能が人間の細胞に与える影響」という記事を載せています。
福島第一原発の事故によってまき散らされる放射能は、なぜ危険なのでしょうか? 放射能は人間のDNAを破壊し、傷口に放射されると骨髄を傷めたりするのです。その結果、人体は免疫を大きく低下させ、病気になりやすくなり、癌を発生させ、場合によっては死に至るわけです。
放射能に含まれている放射線の特徴はそれぞれ次のようになっています。
・アルファ線
アルファ線の粒子は大きく、ある種の「紙」で止められます。ですから、体外に出してしまえばよいのですが、体内にとどまっていると極めて危険です。
・ベータ線
ベータ線の粒子は小さく、皮膚に潜り込めるので危険です。
・ガンマ線
ガンマ線の粒子は小さく、X線に似ていて、体にとって危険です。
・ヨウド131とセシウム137
これらはいずれもガンマ線を出し、体にとって有害です。
・プルトニウム
アルファ線とガンマ線を放出します。肺がんの原因となります。
上記の放射能はいずれもエネルギーを放出していますが、途中で半減します(半減期)。ヨウド131の半減期は30年、セシウム137は300年です。